教育基本法と教科書検定


2011年6月号の雑誌「世界」に中学校教科書採択の記事が載っていたので、思ったことを書いておく。
2006年に改正された教育基本法の前文は以下。

我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。

この最後の文に「日本国憲法の精神にのっとり」と書かれている。日本国憲法の精神は「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」であるから、これらを最も重視した教育を日本国民に行っていくべきと書かれているように思う。教科書はこの精神にのっとっている必要があるだろう。具体的には「国民に主権のない政治体制に批判的であること」「戦争行為や軍事的な圧力に批判的であること」「人権侵害に批判的であること」だろうと思う。このような日本国憲法の精神にのっとった教科書を採用するように地域の教育委員会に対して働きかけていくことは、改正教育基本法の理念を尊重していることになるだろう。
改正前に問題と言われていた、本文の「心身ともに健康な国民」「道徳心」「国や郷土を愛する」という文言に関しても、日本国憲法の精神にのっとった解釈をしていく必要がある。
「たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家」である日本というのは、民主的という文言から分かるように戦後日本のことであり、戦後日本の歴史は数十年と短いが、改正教育基本法の理念に従い、この伝統を継承する教育を市民は推進するべきだろうと思った。